1970年代の2度の石油ショックやサウジアラビアを中心にしたOPEC(石油輸出国機構)の原油政策は、世界の原油価格や世界経済に大きな影響力を持ってきました。
しかし、2年ほど前からアメリカやカナダでシェールガスの商業生産が本格化し、非在来型の化石燃料が中東地域の在来型原油・天然ガス埋蔵量を遥かに凌ぐことが解ってきました。
20世紀の国際政治は在来型原油・天然ガス埋蔵量の2/3が中東地域に集中していた為に、中東地域の地政学的リスクに翻弄され続けてきました。
しかし、シェールガスを始めとする非在来型の天然ガスや原油が北アメリカや中東地域以外に存在することが明らかになり、国際資源地図を大きく変貌させる可能性が出てきました。今迄、アメリカは中東地域から大量に原油と天然ガスを買ってきました。しかし、アメリカが中東の化石燃料に依存する必要が無くなった場合、ホルムズ海峡に2隻の空母を置いておく必要性も少なくなります。
また、原油生産を背景にしたOPEC(石油輸出国機構)の発言力や国際経済・国際政治に於けるプレゼンスが低下することは否めません。
しかし、10年・20年のスパンで考えた場合、中東地域の在来型原油・天然ガスが直ぐに要らなくなる訳ではありません。確かにアメリカを始めとするOECD諸国の需要は減る筈ですが、中国・インドの新興国が中東地域の在来型原油・天然ガスを必要とするからです。
従って、中東産油国経済が凋落するのは、その後のことではないでしょうか。
それを物語る様に中東諸国のGDP成長率は2008年までの平均に比べて2008年〜2035年の平均値はGDP成長率の鈍化を予測していますが、凋落するという減り方ではありません。
1990年〜2008年 | 2008年〜2035年 | |
---|---|---|
サウジアラビア | 3.2 | 3.3 |
イラン | 4.7 | 3.0 |
イラク | -2.0 | 4.3 |
UAE | 5.5 | 4.0 |
カタール | 8.8 | 5.0 |