変わる世界のエネルギー勢力図



変わる世界のエネルギー勢力図

シェールガスで台頭するアメリカとカナダ

シェールガスで台頭するのはアメリカとカナダシェールガスで台頭するのはアメリカとカナダ

シェールガスの推定埋蔵量は中国が36兆立方メートルでトップの埋蔵量を誇り、アメリカが24兆立方メートルで続いています。
そして、3位アルゼンチン22兆立方メートル、以下、メキシコ19兆立方メートル、南アフリカ14兆立方メートル、オーストラリア11兆立方メートル、カナダ11兆立方メートルと続きます。
しかし、上位の中国・アルゼンチン・メキシコ・南アフリカはシェールガスの開発に殆ど手付かずの状態ですから、2020年頃までを睨んでもシェールガスで台頭するのはアメリカとカナダであることは明白です。シェールガス開発には技術力と資金力と水と時間が不可欠だからです。

カナダが新たな資源国に名乗りを上げるカナダが新たな資源国に名乗りを上げる

従って、2020年頃までを展望するとアメリカが資源大国として復活し、カナダが新たな資源国に名乗りを上げることになります。

ロシア・OPEC諸国は価格決定の主導権を徐々に失っていくロシア・OPEC諸国は価格決定の主導権を徐々に失っていく

一方で、在来型原油生産のイニシアチブを握っていたOPEC諸国と在来型天然ガスのロシアは、今後、守勢に立たされ価格決定の主導権を徐々に失っていくことは間違いありません。
つまり、今後はオイルショックや中東のオイルを巡る大国の駆け引きは影を潜める可能性さえあるのです。また、ロシアはエネルギー戦略そのものを、根底から練り直す必要に迫られています。

北米シェールガス生産で起きる世界の天然ガス供給の玉突き

アメリカでシェールガス革命が起こったことで、世界のエネルギー市場で天然ガスの供給の玉突き現象が起こっています。
まず、アメリカでシェールガス生産量が増加するにつれて、当然のことながらアメリカの天然ガスの輸入量は激減しています。遅くとも昨年か今年中にはアメリカがロシアを抜き世界最大の天然ガス産出国になり、2016年頃にはアメリカがLNG純輸出国になると見られています。

欧州を独占していたロシア産の天然ガスが行き場を失っている欧州を独占していたロシア産の天然ガスが行き場を失っている

そこで、アメリカに向かっていた中東カタールの天然ガスは、現在、欧州に向かっています。そして、欧州に値崩れしたカタール産の安い天然ガスが供給されることで、欧州を独占していたロシア産の天然ガスが行き場を失っています。
困ったロシアは中国を目指していますが、今のところ中国に動きはありません。
そこで、現在、ロシアが狙うのは世界で最も高い天然ガスを買っている日本と韓国を含むアジア諸国なのです。

東産やロシア産の天然ガスは供給過剰に陥る可能性が東産やロシア産の天然ガスは供給過剰に陥る可能性が

しかし、日本には既に長期契約のカタール産とオーストラリア産の天然ガスが供給されており、2016年頃からはアメリカ産シェールガスが供給される見込みなのです。
従って、今後、中東産やロシア産の天然ガスは供給過剰に陥る可能性があると言えます。
そして、この様なエネルギーの勢力地図の変化は、微妙に国際政治のバランスに影響を与えていくでしょう。
少なくともアメリカがイラク戦争の様な犠牲を払って中東でのプレゼンスを維持する必要は無くなると考えられ、世界のエネルギー戦略のパラダイムの変化が世界の安全保障体制のパラダイムに大きな変化を与えていくことになります。