供給先を失うロシアの天然ガス



供給先を失うロシアの天然ガス

深刻なロシアの現状

ロシアの農業も多くの農産物を輸入に頼っているロシアの農業も多くの農産物を輸入に頼っている

冷戦崩壊後、ロシア危機などで経済的に困窮したロシア経済を救ったのは、天然ガスや石油などの地下資源でした。宇宙産業や兵器産業以外にロシアには世界をリードする様な産業が育っていないことが最も大きな問題ですが、ロシアの農業も多くの農産物を輸入に頼っているのが現状なのです。一般的に原油価格が1バレル80ドルを割り込むとロシア経済は苦しくなると言われており、ロシアの資源が売れないと農産物を買うこともできなくなる訳です。従って、北米から世界市場に安いシェールガスが供給されて一番困るのはロシアなのです。在来型の天然ガスの主な生産国はロシア・イラン・カタール・アルジェリアで、これらの国がガスOPECを作って天然ガスの価格を吊り上げてきました。

独占的なガス供給はロシアにとっては「金のなる木」だった独占的なガス供給はロシアにとっては「金のなる木」だった

特に、ロシアの天然ガス輸出の7割は欧州向けで、欧州への独占的なガス供給はロシアにとっては「金のなる木」でした。しかし、2006年〜2008年のロシアとウクライナの価格交渉のもつれから、ロシアがウクライナ向けのガス供給を停止し欧州へのガスの供給も止まりました。このことが発端で欧州は天然ガスの供給先の多様化の検討を始めた矢先に、シェールガス革命が始まった訳です。

ロシアの深刻度は中東諸国の比ではないロシアの深刻度は中東諸国の比ではない

従って、シェールガスの登場でロシアは天然ガスの世界一の産出国の地位から滑り落ち、その深刻度は中東諸国の比ではありません。国家予算の52%を石油や天然ガスの輸出に頼るロシアは、今後、国家経済どころか国防能力さえ低下しかねない状況なのです。

売れないロシア産在来型天然ガス

高いロシア産天然ガスはヨーロッパ市場では敬遠されつつある高いロシア産天然ガスはヨーロッパ市場では敬遠されつつある

ロシアの天然ガスの供給先のヨーロッパではカタールからの安価な天然ガスが流れ込み、高いロシア産天然ガスはヨーロッパ市場では敬遠されつつあります。例えば、ドイツの大手電力会社のエーオンがロシアのガスプロムに長期契約の天然ガス価格の値下げを要求しました。ロシアは契約違反を主張し訴訟に発展しましたが、結局、ガスプロムは2割の値下げを認めたのです。そこで、ロシアは天然ガスの供給先をヨーロッパから中国に変更することを目論みましたが、今のところ中国はロシアから買わずに中央アジアから買っている様です。そこで、困り果てたロシアが矛先を向けているのは日本と韓国です。

天然ガスパイプライン構想が再び持ち上がっている天然ガスパイプライン構想が再び持ち上がっている

以前、構想段階で立ち消えになった日本海までの天然ガスパイプライン構想が再び持ち上がっています。ロシアのプーチン大統領が北方領土問題をチラつかせながら、日本に秋波を送るのはそのためです。