天然ガス価格は下がるのか?



天然ガス価格は下がるのか?

アメリカ天然ガス価格

天然ガス価格はシェールガスの増産を受けて大幅に下落天然ガス価格はシェールガスの増産を受けて大幅に下落

近年のアメリカの天然ガス価格はシェールガスの増産を受けて大幅に下がっています。
アメリカの天然ガス価格の指標である「ヘンリーハブ価格」は、ピークの2005年に15ドル/100万Btu手前まで上昇しましたが、2012年に入り3ドル台まで急落しています。
その結果、シェールガスの増産によって天然ガス価格が下がり過ぎ、シェールガスの掘削から撤退しシェールオイルの掘削に切り替える業者も出ています。
アメリカの天然ガスは気体のままパイプラインで生産地と消費地が結ばれているため、需要と供給のバランスによって天然ガス価格が上下し易い訳ですね。つまり、アメリカの天然ガス価格は市場価格を反映し易いと言えます。

掘削から撤退する業者が増えればまた価格が上昇する掘削から撤退する業者が増えればまた価格が上昇する

従って、今後、シェールガスの掘削から撤退する業者が増えればシェールガスの供給が減りますから、また価格が上昇する可能性も十分に考えられます。
やはり、市場価格は政府などの思惑に関わらず、現在の様に需要と供給のバランスだけで決まる方が合理的と言えます。

日本のLNG(液化天然ガス)価格

LNG(液化天然ガス)価格が原油価格に連動しているLNG(液化天然ガス)価格が原油価格に連動している

一方、日本が中東カタールやオーストラリアから買っているLNG(液化天然ガス)価格の決定要因は、非常に複雑と言わざるを得ません。
まず、最初に指摘しなければならいのはLNG(液化天然ガス)価格が原油価格に連動しているということです。
また、日本は海に囲まれていますから、気体の天然ガスを液化してLNG(液化天然ガス)として、タンカーで運ばなければなりません。海底パイプラインができれば別ですが、現在は気体の天然ガスを液化してLNG(液化天然ガス)にするコストとタンカーの輸送コストに加えて、LNG(液化天然ガス)を気体の天然ガスに戻すコストが掛かるのです。
そして、もう1つのコスト増の要因は長期の買い付け契約です。

電力会社やガス会社は調達コストよりも安定供給を優先する電力会社やガス会社は調達コストよりも安定供給を優先する

もともと、電力会社やガス会社は民間の上場会社ですが、実態は民間の上場会社に似つかわしくない地域独占会社です。東京に住む人は東京電力と東京ガス以外の業者を選択することは実質的に不可能です。また、LNG(液化天然ガス)などの調達コストは消費者が払う電気料金やガス料金にスライドして上乗せできますから、電力会社やガス会社は調達コストよりも安定供給を優先します。
従って、電力会社やガス会社はLNG(液化天然ガス)などの調達に於いて、価格変動リスクを負いませんから価格交渉は売り手ペースの売り手市場になってしまいます。つまり、売り手の言い値で買っている訳です。
その結果がカタールなどとの長期契約に於いて、現在の価格は15ドル/100万Btu〜17ドル/100万Btuという途方も無い価格に繋がっています。

福島原発事故により日本の状況は一変した福島原発事故により日本の状況は一変した

しかし、福島原発事故により状況は一変しています。原子力発電を止めたことで、火力発電への依存度が高まり高過ぎるLNG(液化天然ガス)の調達コストに批判が集中しています。
この期に及んで急に価格交渉をしても足元を見られるだけなのです。
そして、シェールガス革命によって国民は日本が調達するLNG(液化天然ガス)価格と、アメリカの天然ガス価格の違いを知ってしまった訳ですね。
また、電力会社やガス会社の実態が、民間の上場会社に似つかわしくない政府系の地域独占会社であることに気が付いたのです。